シーティング技術
 シーティングとは、簡単に言うと、車椅子上で正しい姿勢をとるための技術のことです。欧米では20年以上の歴史のある技術で、PTやOTには、シーティングを専門とするシーティングスペシャリストと呼ばれる人達やシーティングについて評価し、処方する、シーティング・クリニックも多くの病院やリハビリセンターで行われています。
 日本では、車椅子を商品として購入しているだけの場合がよくありますが、義足や装具は身体に合わせて採寸し、関節可動域等も考慮して作成するのに、なぜ、車椅子にはそれらの考慮が抜けていたのでしょうか。 結果として、ずり落ちや傾きなどの悪い姿勢をとることになり、痛み、褥瘡、変形、拘縮、脱臼などが生じてしまうのです。車椅子上の姿勢の悪さによって生じる問題は、この他にもたくさんあります。飲み込みにくさ、食べにくさ、誤嚥、呼吸器系の疾患、痙性や高い筋緊張、消化器系や循環器系の問題などです。
 多くの問題に対して、個別に解決しようとする努力は、様々な形であったのですが、問題の根本である「姿勢」自体の改善がされなかったため、根本的な問題の解決は難しく、症状が再発することもありました。
 シーティングでは、座位姿勢の基本となる骨盤の傾きを改善することで、姿勢を改善し、問題の根本を解決することで、症状を解決するための技術です。シーティングは、重度障害の方だけでなく、脊随損傷や歩行が可能な軽度の障害の方にも使用される技術であり、安定性と快適性を提供するものですが、最大の目的は機能性の向上にあります。また、変形や褥瘡が生じる前に防止する「予防」にも使用されています。

私とシーティングの出会い
私は、脊随損傷の車椅子使用者で、障害は右側が胸随の10番、左側が9番の完全麻痺です。左右の障害レベルが異なるため、受傷直後から左に傾く傾向がありました。1982年に留学先の米国から帰国した際に長時間の飛行機のシートに座っていたことで左側の坐骨に褥瘡が生じてしまいました。その褥瘡は何とか治したものの、左側の坐骨付近に褥瘡ができやすくなり、何度か再発しました。
 1985年に帰国後、86年に褥瘡が悪化し、入院し、初めての手術を受けました。しかし、手術の縫合位置を坐骨の真下にされてしまったことで、6ヶ月後に再入院して再手術しました。しかし、8ヶ月後に再発し、何とか治したものの、4ヶ月後に再発したため、脊随損傷の専門病院に入院して再手術を行いました。その入院では3ヶ月の入院中に3回の手術を行いました。その後も、何度か再発を繰り返しましたが、入院はせずに何とか治療をして仕事を続けていました。
 1990年末にアクセスインターナショナルを設立した私は、車椅子のクイッキーに続き1993年に、車椅子用シーティング・システムのパイオニアであるジェイメディカル社の日本総代理店になりました。渡米してトレーニングを受けると共に、日本で初めてのシーティングセミナーを開催。米国から招いたシーティングスペシャリストであるPTの通訳として関東の7つのリハビリ病院でセミナーを行いました。これらの経験によってシーティングによる褥瘡治癒の可能性を学んだ私は、ジェイメディカル社の紹介を受け、94年にコロラドのクレイグ病院に入院して手術を受けました。
 手術自体は、日本で行われているものと大きな違いはありませんでしたが、大きく異なったのは、車椅子に乗ることができるようになると直ぐにシーティング・クリニックを受診し、骨盤の傾きを治し、再発を防止するためのクッションとバックサポートを処方されたことです。その後9年間、褥瘡は一度も再発していません。  事故に遭って脊随損傷になっても落ち込まなかった私ですが、度重なる褥瘡による合計12ヶ月以上、7回の入院と6回の手術には、かなり落ち込みました。ベッドに寝ていなければならないことは自分にとって最大の精神的苦痛でした。脊随損傷なのだから、この苦しみを背負って生きていかなければ、とさえ考えていた私を救ってくれたシーティングには、感謝してもしきれないほどです。

シーティング・スペシャリストへ
 1994年に米国での手術とリハビリを終えた私は、自分が救われたシーティング技術を日本に伝えたいと、ジェイ・メディカル専属のPTからトレーニングを受け、シーティングを学びました。帰国後の9月には、関西の6つの病院やリハビリセンターでシーティングセミナーを開催しました。その後私は、毎年、国際シーティング・シンポジウムやカナディアン・シーティング&モビリティ・コンフェレンスなどの講習会に参加し、最新のシーティング技術と情報を取得しています。シーティング技術には、毎年のように新しい製品や技術が開発されるため、2〜3年前の知識では役に立たないことも多いのです。
 今年で、シーティングを日本に紹介してから10年が経ちました。「シーティング」という言葉が認知されてきたのは良いことですが、単に車椅子を調整することをシーティングだと考えている人達もいます。そして、まだまだ多くの方にシーティングを知っていただきたいと考えています。
 現在私は、毎月日本のどこかで、シーティングセミナーを開催し、シーティングに対する正しい考え方と処方技術の普及に努めています。また、シーティング技術の普及に欠かせない製品の提供のために、私の会社であるアクセスインターナショナルでは、世界のシーティング関連のトップメーカーの日本総代理店として活動し、世界のトップレベルのシーティング関連製品を日本に提供しています。

 日本総代理店として活動しているシーティング関連のトップメーカー
 ・ジェイ(サンライズメディカル社)(シーティングシステム)
 ・クイッキー(サンライズメディカル社)(手動車椅子・電動車椅子)
 ・ボディポイント・デザイン社(ベルト類)
 ・ウィットマイヤー・バイオメカニクス社(ヘッドサポート類)
 ・PDG(Prduct Design Group)社(上肢支持テーブル類)

このホームページでは、私の関わるシーティング情報をご紹介しています。興味を持たれた方は、ぜひシーティングセミナーにご参加ください。セミナー自体は、シーティングの概念を中心としたもので、特定の商品を使わなければならないという内容ではありません。セミナースケジュールと参加申込みについては、こちらをご覧ください。施設や病院内でのセミナー、グループや団体のご依頼による講習会も随時受け付けています。セミナー開催依頼につきましてもこちらをご覧ください。


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